発想の原点
出典: SGK_Wiki
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発想の原点
人類は言葉を持つ。そして、誕生した瞬間から言葉とその言葉が対象としている生物や物体と1対1の対応をつけながら育つ。電車の中でも、子供から、“あれ、なーに?”と聞かれ、母親が“信号よ”と答えていたりするのを見かける。子供は、点滅する信号と“しんごう“、という言葉を一体化させて、頭脳に記憶させるのである。
しばらくすると、親子の間では、いちいち実物を尋ねなくても、“しんごう“と発すれば、あの赤や青に点滅する装置を頭に描くことが出来るようになる。このようにして、極めて多くの言葉と実体を結びつけて、人は成長していく。それに伴って、友達や親兄弟同士の間でも、実体を目の前にすることなく、言葉を発するだけで、コミュニケーションが生まれ、意思疎通が図られる。
仮に、一方の人が、知らない実体についても、会話を通じて、実体のおぼろげな姿を想像できるようになる。この想像力は、成長の過程で、知らず知らずのうちに培われてくるものである。想像するという、頭脳活動は、とりもなおさず物を“創造”することでもある。見たこともないものを、頭脳の中に描くことである。
この想像するということは、言語的なものに発端をおく。その際、言葉と実体とを結びつける経験をどれだけ多く重ねてきたかが、想像の枠の大きさを決める。経験を多く積み重ねてきた人は、例えば“馬”という言葉を聴いただけで、競走馬から野生馬、生態系の異なる環境で育って来た馬、遺伝子の異なる馬など、数多くの馬を思い起こすことが出来るであろう。動物園の馬しか知らない人は、別の馬を想像しろといわれても、なかなか想像できないであろう。経験量の差が想像力に、もろに出てくる。
発想の体系化
発想の能力は,様々な情報をいかに取捨選択して処理し、役に立つ新しい情報として育てあげることが出来るかに懸かる.その芽を引き出す情報としては、まず、頭脳に浮かんでいる“物”のイメージ情報と具体的な機構や部品に関する情報とに大別し手考えなくてはならない.前者は、“発想”と一言で括られ,個人の能力に依る部分が大きい。しかし、現在は、グループで知恵を出しあい、問題解決へ向かう事例が多い。従って、発想を手助けする手法、過程のあり方も生まれてきている。
さて、このイメージ情報は“物に関する物理的機能や構造とは直接的に関係なく,言語表現的なものや感覚的なものが主となる.個々人の感性や経験などに基づくものである.個々人が誕生以来,蓄積してきた知識を活用して構築していくこととなる.次いで,具体的な形態としてのデザインへと導かれて行くことになる
(1) イメージの段階は,概念の構築段階といえる。頭に創造したイメージ情報を言葉で表す。そのため,あいまいで抽象的な表現となる.用いられる言葉も人によって多種多様である
(2) 次いで,この多種多様な言葉を整理して,いくつかの纏まりをなす言葉にグループ分けしていく.抽象的、概念的であったものを具体的な造形イメージとして構築して行くこととなる.
この構築していく過程で採用される手法としては、KJ法(川喜多二郎;発想法:中央公論社(昭和45年))が有効と考えられている.当然、構築し直された造形のためのイメージ情報は、言葉数としては,前段階で得られた言葉数と比較すると少なくなるが、中間的な言葉も新たに発想され、加えられるようになる。このことは、極めて有効である.
(3)具体的なデザイン化の段階では,未だ存在しない形態をもやもやとしながらも図として表現する.そのために採られる一般化された既存の手法は存在しない.そこで,試行錯誤を重ねながら形態として表現できるような訓練を重ねていくことが大切である.その際、効果的なのは、既にある製品の形態や機能を系統的に分解し,それを細密化して項目別に分別し割り振られた図や表などを利用する。項目をじっと睨んで,全体形状を把握するようにすることによって発想の輪を広げて行くことが出来る.絵画を描く場合に画集を傍らにし、自分の創造した内容を具体的な構想として纏めていく際に採られる手法と同じである。
イメージ情報の獲得
KJ法は個々人の描いたイメージ情報を構造的に処理し、それをどういう手順で纏め上げていけば良いかという一種の計画手法である。その手順は、
① 一人一人が頭の中に持っている知恵や情報を、討論によって、共通の広場に吐き出させる。その際
- 同席する他人のアイデアを批判しないこと
- 自由奔放にアイデアを述べること
- いろんな角度からのアイデアを出来るだけたくさん出す
- 他人の意見を受けて、更にそれを発展させる。
- 他人のアイデアに触発されて、他人と自分のアイデアを結合していく
② 出されたアイデアについて、何らかの共通の性質があるという同質性に注目してグループ分けをする
- 全然性質の違うアイデア同士を集める。
- それらの組み合わせからどういう意味が見出せるかという纏める
③ 異質のアイデアの組み合わせから“何かを発見する”。あるいは“何かが発見される”こととなる。ばかげていると思われたアイデアが非常に大切なものであるということもある。
④ そのような分類が出来たら、同質的なアイデアをいかに一つとして要約するかという手続きに移る。
⑤ 要約された結果を分析する。
一人一人に、メモ用紙を配布し、それに頭に浮かんだ言葉を手当たり次第書かせる。この段階であらぬ脚色をしたりする機会を与えると発想の輪が萎むこととなる。そこで、時間的制約を加え、短時間内に行う。個々人から出てくる言葉数は、高々5~10程度である。これを数人分持ち寄ると30近くなる。更に、他人の言葉を聴いて新たに浮かんだ言葉を付け加えさせると50近くにもなる。
次に、上記に従った例を挙げておく。
ゴルフクラブの改良
- 芯に当たらないと飛ばないドライバ。芯の部分は金属、それ以外の部分は衝撃を吸収する材質
- パターのヘッドに軸を付け、ねらい易くする
- ヘッドを大きくして、空振り防止を図る
- エッジを深くして、スピンがかかり易くする
- シャフトを長くして、遠心力を利用して飛ぶ距離を伸ばす
- 身長に応じてクラブの長さが調整できる
- 握りラバーの部分が回転して、手に負担がかからないシャフト
- シャフトの途中に関節が付いていて、スイングスピードを上げる。振り終わりに手を止めれば関節から下の部分がスピードを増してヒットする
- 途中で折れ曲がるクラブ
- スイートスポットを大きくする
- スイングの速度によって、重心位置が移動する
- ヘッド大きくして、材質を硬くする
- ヘッドの角度が自動調整できるクラブ
- クラブのシャフト部分にばねを取り付け、しなりを利用して飛ばす。反発力のあるものが良いので、カーボン繊維なども可能
- シャフトの中を空洞にし、錘を入れる。振ると先端に錘が移動し距離を出せる。
- ヘッドに錘をつけられるクラブ
- ヘッドの溝数を変えられるクラブ。溝とかみ合う形の磁石を利用
- ヘッドを流線型にして空気抵抗を減らす
- パターの打撃部が空洞で、角速度により、流体をつめたり、抜いたり出来る
- 角度は変わらないが、振る人の気持ちにあわせて飛距離が変わる
- ラジオが聞けるパター
ゴルフシステムの改良
- 打球時のタイミングを光や振動で伝える。
- 池に落ちたボールは水中で一箇所に集められ、ベルトコンベアによって排出される。
- 巨大画面に映し出されたホールに向かって打ち、画面にボールが当たった時の強さや角度によって、飛距離を割り出す
- 1箇所で、18ホール全部が見られるようなゴルフ場の設計
- 素振り状態を感知し、最もよいポイントで打てるようにボールをセットする装置。素振りをモニタリングし、インパクト位置を計測してその位置にボールをセットする。
- 室内シミュレーション。現在のシミュレーションに加えて、ボールの飛んだ所まで歩くことも考慮する。登りでは、シミュレータも斜めになる
- パッドのとき、ボールが近づいたら引っ込むボール
- 車椅子でも出来るゴルフ
- CGと組み合わせて、世界中のコースが回れるバーチャルゴルフ
- インターネットゴルフ
新しいゲームの提案
- クレー射撃あるいは3種競技に類するゲーム
- ビリヤードゴルフ。台上にコースを設ける
- パチンコゴルフ。入った穴によって得点が異なる
- ロシアンゴルフ 1ホール開始前に6個のボールが用意される。その中のひとつには、打つと破裂し(残念でした等と描かれたパラシュートが入っている)、それが、当たった人は、そのホールは失格または一人負けとなる
- ビリヤードゴルフ。壁に囲まれた場所で行う。少なくとも一度は壁に当てなくてはいけないとし、2回以上当てればボーナス点が付く
- ラグビーゴルフ。ボールをラグビーボールの形状にする。どこに飛ぶか分からないので面白い。
- ブーメランゴルフ。ボールにブーメランのような機能をつける。ホール近くから打って、戻ってきたボールをホールに入れる
- 空中ホールに入れるゴルフ
- クラブを振るロボットを操作してのゴルフ
- ボールにスーパーボールを使った、ランダムゴルフ
- オリエンテーリングゴルフ。アドベンチャーゴルフ
- カップが、1ホールに数個あり、どこに入れるかで点数が変わるゴルフ
ボール、クラブの利用範囲の拡張
- ボールをディスコの天井から降らせる
- ボールをコインサートのステージから放射する
- ボールを一面に敷き詰めてカーリング
- ゴルフボールが通過する程度の配管をし、エア駆動でボールを搬送する。ボール中には手紙などを入れる
- エコボール。バクテリアによって分解される地球に優しいボール
- クラブキャンディ。食べられる
- 飛距離が表示されるボール
- グリップにいぼいぼが付いていて、手のつぼを刺激する。
具体的なデザイン化
①前節で述べたような奔放に出されたアイデアについて、同質的なアイデアにいかに要約するかという手続きが必要である。(この要約は、恣意的にされても構わない。)
②そして、引き続いて、同質的なアイデアに要約し、それをくくるアイデアを見出す。
③そのアイデアから新たな措置を発想する。
「ゴルフの改良」という課題で、アイデアを出し合い、それを同質的なものに分類し、要約した結果を前節に示した。アイデアは多く出されたが、これを、分類し、要約した結果
- ゴルフクラブの改良
- ゴルフシステムの改良
- 新しいゲームの提案
- ボールクラブの利用範囲の拡張
というアイテムに纏め上げることが出来た。
次いで、纏め上げられたグループ化に従って、描かせたデザイン例を挙げておこう
①ゴルフ練習器
室内で手軽に打撃感が得られるもので、短いクラブを使用する。本クラブは強く打っても完全に衝撃を吸収する構造となっている。また、クラブの振れ方とクラブヘッド内臓のLEDの軌跡によりスイングのチェックもできる.
本器の基台は半球状で錘を内臓し、回転支持部に抵抗を持たせてある。打撃による揺動の程度によって、抵抗値が変化するので、その変化に応じて飛距離を換算できるようにしている。室内でも安心して練習できる.
②ゴルフ練習用レーザクラブ
スイングやパット時のヘッドフェイスの状態を的確に読み取る安価な練習器がない.本器はレーザ光線を利用して、目でボールに対しするフェイス角を読み取ることができる。
半導体レーザを内臓するレーザヘットを取り付け,シャフトの中心軸延長線上にレーザスポット光とレーザライン光を同時照射する。
ゴルフクラグのフェイス面を疑似的にレーザ光線で描き出す。これによりレーザ光線の軌跡を目で確認しながら,スイングやパットの練習が行える。
このようにして、新規な装置を発想し、構想図として纏め上げることが出来る。発想は、まず、身近なものに関心を持ち、それを自分の意思に合致した形に変更する。あるいは、機能を持たせることから始まるといえよう。
