検証対象面と断面力

出典: SGK_Wiki

1.1.1 検証対象とする断面の取り方

 機械部品の強度を検証するには、まず以下に述べるような材料力学に関わる基礎的な知識を必要とする。
① どのような物体でも,支点で支えられて安定を保っている.そこへ,外力が作用した場合,作用~反作用の原理で,支点にも力が作用することは周知のことである. 上記の現象は,言い換えれば,外力が物体内を伝播してきて,支点まで達したのが支点反力とみなされる.

② そこで、この伝播という現象をもう少し詳細に検討してみる。いま、外力の作用位置に極めて近い位置で、図1のように切り込みを入れて,物体をA,B二つの部分に分けたとする.切り込みを入れた箇所では、その表面全体に渡って力が作用していると考えられる。A部分に対しては、その力の総和は、当然外力と等しい。言葉を換えてみると、A部分の切り込みを入れた箇所にまで外力が伝播してきていると言える。

③ B部分の切り口の形状は、A部分の切り口の形状と全く同じである。この切り口の面の間で作用し合う力は、作用~反作用の原理から大きさが同じで、方向が逆となるだけである。A部分の切込みを入れた箇所に作用している力の総和は外力と等しかったから、結局切り口を通してB部分に作用する力は外力と等しいこととなる。 結局、B部分にも外力がそのまま伝わってきていることになる。

④ 新たな切り口を、先ほどの切り口の近傍に取れば、その切り口部分に対しても、外力が伝播してきていることになる。すなわち、どのような位置にどのような形状の切り口を取ろうとも、そこには外力が伝播してきている。この断面における力を断面力という。

⑤ 従って、物体をA、Bの2つに分けて、A部分を対象にして解析した結果とB部分を対象にして解析した結果とは全く同じとなる。

このことを、理解した上で、断面力に関わる力学的な検討を加える必要がある。市販の教科書によって、同じ形状の物体でありながら、A部分を対象にして解析しているものとB部分を対象にして解析しているものとがある。教科書を参照しているうちに混乱しないようにして頂きたい。
ここでは、物体を仮想上2つに分離した場合、次節にも述べるような理由から、左側に来る部分Bを対象にして検証する。

1.1.2 座標系の取り方の大切さ

1)座標軸の取り方
断面力は、大きさと方向のある量である。すなわち、ベクトル量である。このような量を扱うには、座標系をしっかりと定めなくては、方向も大きさも決まらない.座標系の取り方によって、断面力の正負の値が異なるし、意味も異なる。市販の教科書では、座標系があいまいなままであったり、記述されていないものも多々ある。注意を要する。
一般に、人間の感性として、図2に示したように左側に原点があり、そこから右方向にx軸が延びている座標系が馴染み易い。他の軸についてはy軸の取り方に応じてz軸の方向が決まる(x軸をy軸の方向に向けて回転して行った場合、右ねじの進む方向にz軸が存在する)
2)座標軸に合わせて断面力の記号が決まる
ちなみに、梁を対象にして、左端に座標系の原点を取り、x、y、z座標系を取る(この場合、y軸を紙面に直角方向に取ると、紙面に向かって下方向がz軸の正方向となる). ここで、物体内に微少要素を考え,図3に示したように取ってみる.この微少要素に働く力を解析するわけであるが,前節③で述べたように,この微少要素をA側として扱うか,B側として扱うか明確にしなくてはならない.B側に取った場合は,生じた断面は常に右側に存在する.従って,微少要素の右側面(正の面)に作用する断面力を解析することになる.A側に取った場合は,生じた断面は左側になる.従って,左側の面(負の面)に作用する断面力を解析することになる.
一般に、左側の面(負の面)に作用する断面力を解析するのは、前述したように馴染み難い。ここでは,B側に取って解析する.従って,微少要素の正の面を常に念頭に置くこととなる.
断面力は、図3中に示したように微小要素の正の面で座標軸の正方向に働く場合を正値とする。すなわち、せん断力Fzは図示した矢印方向に働くのが正値となる。y軸周りに働くモーメントMyは、図示した矢印の方向(右ねじの進む方向(y軸方向))が正値である(負の面で,このMyと釣り合うモーメントは,あたかもy軸の負の方向に向けて働くことになる).
この座標系の取り方を決して誤らないようにして頂きたい。教科書によっては、紙面に向かって下方向にy軸の正方向を取っているもの(従って、z軸は紙面前方より後方へ向かう)がある。そのような場合は、図と同じ向きにモーメントが示されていても、それはz軸周りに働くモーメントMzであり、その値は負である。z軸を紙面に向かって下方向に取った場合のMyとは.正負の符号が異なる。たわみなどを求める際、混乱を引き起こすので注意して頂きたい。

1.1.3 せん断力図と曲げモーメント図の座標系

物体内の座標系は下向きにz軸を取った。しかし、せん断力や曲げモーメントといった物理量は図4 に示したように、上方向きに正方向を取るのが理解し易い。 そこで、図5  に、梁に対して様々な方向に取った座標系と、それに応じた断面力の記号及びその正負を示した。
この図にて、z軸を下方に向けて取った場合、外力Pが加わった場合、外力Pの向きと同じ方向にせん断力Fzの値が増加あるいは減少する。また、曲げモーメントMyはせん断力Fzの値が正であれば増加、負であれば減少する。従って、z軸を下方に向けて取るのが、人間の感性にあっている。