ひずみを90%以上低減できる浸炭焼入れ技術ソフトヒズミック

出典: SGK_Wiki

ひずみを90%以上低減できる浸炭焼入れ技術ソフトヒズミック

大きなひずみをともなう熱処理。基礎的な解析を徹底して行うことで、このひず みを90%以上も低減することに成功した会社がある。
今回は、ヨシノハード(株)のソフトヒズミック技術を紹介する。
ヨシノハード㈱:阿部氏
ヨシノハード㈱:佐々木氏
インタビュアー:編集者
■:ヨシノハードが開発した、ソフトヒズミックとは、どのような技術なのでしょ う
阿部:鋼鉄材料の熱処理の一種で、従来よりも、ひずみを90%以上も低減できる 浸炭焼入れ処理です。
ひずみが劇的に低減できるので、歯車など複雑な形状や、ポンプ内のトロコイド などの組み合わせ部品の焼入れ処理を高精度に行うことができます。
■:従来の焼入れ処理ではできなかったことが、このソフトヒズミックによりでき るようになったのですか
阿部:はい。通常は、焼入れ処理の後工程に「歯研」という研磨の工程が入り、そ こで精度をだすということが行われています。
ソフトヒズミックでは、この歯研の時間を短縮することができます。焼入れによ る寸法の狂いがとても少ないので、歯研もわずかな時間で済むのです。
要求精度によっては、歯研が必要ない場合もあります。
また、ポンプギヤのように、組み合わせが必要な部品では、各部品の精度が高い 必要があります。部品の精度が低いと、組み合わせたときに動かないのです。
ひずみが少ないということは、焼入れ工程での寸法の狂いが少ないとなので、従 来は実現できなかった要求精度で、部品の焼入れ処理が可能になります。
■:現在、どのような部品に使用されていますか。
阿部:さまざまな製品で採用されていますが、代表的なものは、自動車のエンジン 内の精密歯車ですね。
この歯車は、従来の焼入れ処理では、量産化が不可能だったものです。
ひずみが多すぎて、90%が不良品という状態だったようです。
ソフトヒズミックを採用してから、量産可能になったのです。
■:技術的には通常の焼入れと、どういったところが違うのでしょうか
佐々木:はい、作業自体はほぼ同じです。
違う点は、数百度の高温状態での鉄の温度と、そのときの鉄の状態との関係を徹 底的に解析したことです。また、鋼に浸炭させる炭素濃度と硬度の関係を、こち らも徹底的に解析し、双方のデータに基づいた処理である点です。
少し詳しく説明すると、焼入れの際、ひずみを少なくするために、あまり高温に はしたくないのですが、ある程度の温度、通常は850度以上まで温度を上げないと 焼入れの効果がでません。そうしないと硬さのでる金属組織に変化しないのです 。
しかし当社では、700度程度の温度でも硬さのでる金属組織に変化するポイントを 、解析により求めるこに成功しました。これにより、ひずみを大きく減らすこと ができます。
また、焼入れには、高温処理のほかに浸炭という炭素を混入させて硬さを増す処 理が同時に行われます。
鋼鉄は、炭素濃度を高くすると硬くなるのですが、炭素濃度が高いと、その分ひ ずみも大きくなるという性質があります。
こちらも、硬さをだし、かつ、ひずみが最小になる炭素濃度を解析により求めて います。
これら温度と炭素濃度のコントロールを最適化することにより、低ひずみな焼入 れ処理を実現しています。
■:なるほど。基礎的なデータを徹底的に蓄積することで、とくに変わったことを 行わなくてもここまでできるということですね。
阿部:そのとおりです。
■:加工コストは従来よりかかるのでしょうか
阿部:当然、従来とまったく同じです。精度だけが向上しています。
■:ソフトヒズミック技術を開発した後は、どのように売り込みをかけたのですか
阿部:これは運としか言いようがないのですが、ソフトヒズミックの技術開発が終 了した直後に、偶然、
先ほどの自動車の精密歯車加工について相談があったのです。
先方も相当頭を悩ませていたようで、話がとんとん拍子に進み、あわてて量産体 制を整えたほどでした。
■:運も大切な要素なのですね。しかし、チャンスを生かせる体制を作ることがで きたのが一番の要因かもしれませんね。ありがとうございました。